大場久美子(以下、大場)
西洋医学に漢方をとりいれた診療を長年やってらっしゃいますが、そもそも漢方に携わるきっかけはどういう事だったのですか。
院長 下村裕章氏(以下、下村)
大阪医科大学で循環器医として大学の研究室にいたのですが、教授から総合診療科を開設するので内科医として臨床をやってほしいという要請がありまして、循環器内科医として勤務する事になりました。ただ大学病院という特性上、完治が困難な患者さんもたくさんお見えになり、西洋医学の限界を感じる中『漢方』と出会ったのです。
大場
世間では「漢方は副作用はないが、治療には長い時間がかかる」とよく言いますが、私は前から積極的に漢方の治療を受けていますし、決してそのようには感じないのですが。
下村
そうですね。むしろ即効性の高いものが多いと思います。風邪などには漢方をおすすめしております。
大場
先生は、漢方と西洋医学との違いをどうお考えになりますか?
下村
一言で言えば西洋医学は「病気を治す」、東洋医学は「身体の症状を治す」でしょうか。つまり治療方法が違ってきます。例えば風邪を引いて熱を下げる場合、西洋医学は解熱というワンポイントに対してのみ効果がありますが、漢方薬ですと解熱と同時に頭痛や寒気もとれ、一回の処方で身体全体に効果があります。もちろん患者さんにとってどちらがより効果的かを判断して処方致しております。
大場
なるほど、漢方は身体全体のバランスをとってくれるということですね。具体的にはどのような患者さんが多いのですか。
下村
『慢性疾患の方』から『生活に支障はないけどどこか調子が悪い』といった不定愁訴の方まで様々ですね。漢方の理論では「証(しょう)」といいますが、問診・脈診・舌診といった診察を行い、その方の身体の状態を診て行きます。その「証」を医師が把握することから治療が始まります。ですので初診の患者さんの場合、早くても20分位はかかってしまいますね。
大場
そんなにじっくり診ていただけるんですか。有難いです。
下村
そして2回目以降の診察では、初回の診断を一つ一つ確認して行く作業を行います。その変化の履歴を積み重ねることで、患者さんが気づいていなかったことが発見できたり、より良い改善方法が見つかったりします。
大場
患者さんとの信頼関係を築いていらっしゃるということですね。
下村
そう言って頂けますと。私の大学時代の恩師から『 If this patient is your mother ? 』。つまり「この患者さんが自分の母親だったらどう治療するのか」という問いかけがありました。以来、私の座右の銘として患者さんに接して参りました。
これからも、患者さんにとっての最善を常に考えて診療を続けて行きたいと考えております。